PHJでは、医療知識のないTBA(伝統的産婆)の介助による出産は危険だとして、助産師の介助による出産を奨励しています。
PHJの支援開始前、助産師による介助は47%程度でしたが、現在は90%以上になりました。
このように活動の成果は表れていますが、1月の助産所・診療所での出産は56件、病院搬送件数6件、 そして1件だけTBA(伝統的産婆)の介助による出産がありました。
支援地の村では、コストが安いという理由などで 医療知識のないTBAの介助で出産する人もわずかにいます。 そこで伝統的産婆の方々にも 安全なお産への理解を深めてもらうため 助産師との話し合いの場をつくりました。
話し合いの場では、TBAがどのような仕事を担っているか。各村との助産師さんとの関係は構築できているか、といったことを中心に話をしました。
話し合いと調査の結果、ほぼどの村のTBAも一人で出産介助をすることはなく、
助産所に連れて行ったり、付き添ったり、生まれた赤ん坊を沐浴したりといったように、
お産の手伝いをしているようでした。
助産師とも関係が構築されており、仕事内容としては補佐的なものに限られているようです。
全体的には改善されているようなのですが、TBAによる出産がゼロではないので、
今後もTBAとの関係を維持しながら細かな支援が必要だと感じています。
カテゴリー: カンボジア 母子保健改善事業
ストゥントロン保健行政区能力強化支援スタート
今月は、本プロジェクトの4つの柱のうちの1つである「保健行政区能力強化」を
スタートしました。
あらためて事業目標をおさらいすると、
「保健行政区を中心に地域保健システムが機能することにより
妊産婦や乳幼児が適切な保健サービスへアクセスできる。」
そして「保健行政区能力強化」を具体的に説明すると、
保健行政区による保健センターの活動の管理・監督機能の
強化、となります。
つまり、プロジェクトの根幹にかかわる重要な活動であることが
わかります。
まずこうした活動を行うに当たり、プロジェクトの目的について
理解を深めてもらうため、関係者への説明会を行いました。
さらに、活動において必要となる設備(プロジェクターやパソコン、テーブルなど)
支援を行いました。
その後3日間のファシリテーション研修を保健行政区スタッフや、保健センタースタッフ、
またPHJ現地スタッフが受けました。演習や討論が多く盛り込まれ、充実した研修だったとのことです。
さらに計画立案研修も3日間行われました。
この研修は、今後3年間のプロジェクト計画について、PHJスタッフだけでなく保健行政区スタッフなどとともに考えることで
より現状に即したプロジェクト計画を立案し、ともに事業の実施・管理を行うため。
活動を進めるパートナー同士で意思統一を図る、重要な研修といえます。
以上が、今月実施した保健行政区能力強化の支援活動となります。
保健センターの様子
今回は支援対象地内の保健センターの様子を写真でお伝えします。
保健センターは村人に最も身近な公的な保健施設。
ご覧のとおり施設や設備がかなり老朽化し、
不足しているものも多く、改善が必要なことが伺えます。
保健センターの産後ケア室
給水塔
PHJの主な活動は人材教育ですが、保健センターの設備が十分でない場合は
ハード面に関しても支援しながらサポートします。
コンポンチャムで村落調査をスタート
10月は支援地であるコンポンチャム州の村落の調査を開始しました。
この調査の目的は、事業計画の詳細を決めるために事業地の
母子保健の現状を知ることです。
すでに事業計画の大枠は決められていますが、
現地の状況に合った詳細な計画を練っていくために、
村落に足を運び、そこに住んでいる人にインタビューを行うというものです。
PHJカンボジアスタッフと臨時の調査員とで2つのチームに分かれインタビューを行いました。
質問内容は保健センターの利用状況や自身の出産に関すること、基本的な保健知識の
有無等です。
6日間の調査で2歳以下の子供を持つ女性180名にインタビューを行いました。
コンポンチャム州での事業スタート
コンポンチャムの事業は市原新所長のもとですすめられています。
左から会計・事務担当のンゴット、プロジェクトオフィサーのサレット、
ナックリー、運転手のリム(10月末まで)市原新所長、中田、です。
事務所も開設しました。
カンボジアでは新しい土地や新しい場所で仕事や生活を始める場合に、
お坊さんに来てもらうのですが、PHJ事務所の開設時にも来ていただきました。
これから進めるプロジェクトの現状把握のために保健行政区の事務所や
保健センター3か所でインタビューを行いました。
保健センターなどでのインタビューで現状と課題を洗い出し、
今後の活動についてワークショップ形式でスタッフと話し合いました。
プロジェクト完了セミナー
少し前になりますが、7月に「プロジェクト完了セミナー」を実施しました。
これはコンポントム州の活動地の保健センターのスタッフや
農村のキーパーソンを集めて、PHJのプロジェクトを現地だけでいかに
継続していくか、について話し合うことが大きな目的です。
セミナーでは、①(PDM-Project Design Matrix 指標による)プロジェクトの
成果の共有
②プロジェクト完了調査の結果共有(2011年と2014年の同調査の結果比較)
を行いました。
また、これらの情報をインプットにして、保健センター、保健ボランティア、
母子保健ボランティア&伝統的産婆、保健搬送システムの4グループに分かれ、
PHJプロジェクトの活動をどのように持続できるかを話し合ってもらい、
各グループから発表してもらいました。
発表の内容を下記に1例をあげます。
●母子保健ボランティアの場合
・村での家庭訪問、母子保健啓発教育
これまでと同様に自主的に家庭訪問を続け、母子保健教育、
保健センターへの照会を続けていく。
・情報共有活動
3ヶ月に1度の会議に出席し、保健センター⇔村間の情報共有を続ける。
村会議、祭事(結婚式、新生児祝い等)、マーケットでの女性同士の
交流時に積極的に母子保健に関するアドバイスを行い、村人⇔村人間
の情報共有も促進する。
このようにコンポントム州の活動は完了し、現地の人たち自身で
自分たちの健康を守る基盤を育てていきます。
健康な村づくり、現地の人たちにとってはこれが真のスタートでは
ないかと思います。
ぜひとも自分たちの力で健康な村を維持していってもらいたいと、
心から願います。
コンポンチャムへの事務所引っ越し準備
看護師・助産師育成学校に医学図書を寄贈
6月25日に、成田コスモポリタンロータリークラブ様からのご支援をいただき、PHJを介して、カンボジア・コンポンチャム州のRTC(看護師・助産師育成学校)に61冊の医学図書を寄贈しました。これらの図書は、保健省の人材開発局のスタッフをはじめ、RTC教授陣、国際保健機関スタッフが、看護・助産師教育のニーズに沿って選択したもので、看護学・助産師学に関する幅広い分野がカバーされています。
これに伴って、医学図書寄贈式が行われました。
式は、RTCを紹介するプレゼンや日本語を交えたスピーチなどが準備されており、感謝の気持ちにあふれた式でした。
以下、寄贈先の方々よりメッセージをいただきました。
【コンポンチャムRTC学校長より】
私がこのRTC学校長に就任して以来このような多数の医学図書を寄贈いただけたことはかつてなかったので、大変大きな喜びを感じています。成田コスモポリタンロータリークラブ様からいただいた医学図書を多くの生徒に使ってもらうために、学校内の図書室で適切な場所に保管し、管理することをお約束します。また、生徒だけの利用だけではなく、RTCの教師たちも、生徒に教える上での教材作りなどの参考文献として利用できるようにします。今回たくさんの医学図書を寄贈頂き誠にありがとうございます。
【コンポンチャム州保健局母子保健チーフより】
PHJには州保健局への支援だけではなく、コンポンチャムRTCへの支援をいただいたことを大変ありがたく思います。医学図書はRTCの生徒にとって必要不可欠で高い価値のある支援です。彼らがここで学んだことが将来自国の母や子を助けることにつながるからです。医学図書の支援は、お金の支援よりも価値があるものだと私は思います。それだけ、RTCでは最新の医学図書を必要としていました。このように本当にたくさんの医学図書を寄贈頂いた、成田コスモポリタンロータリークラブ様、PHJ様に心から感謝します。ありがとうございます。
【RTC生徒より】
私にとって今もっとも興味があり必要である知識は、分娩介助とヘルスプロモーションの技術についてです。ですから、それらに関する医学図書を多数寄贈してもらい本当に嬉しく思っていますし、それを私たちが利用できることを誇りに思います。これらの本に日本からたくさんの資金を使って頂き、本当にありがとうございます。私たち生徒は寄贈本から得た知識を、RTCの学業期間、そして卒業後もカンボジアの人々のために使いたいと思います。本当にありがとうございました。
大使館・州保健局母子保健チーフのPHJ活動視察
カンボジアの事業は日本NGO連携無償資金協力を受けており、このたび大使館よりN連保健担当の與那嶺書記官がPHJの活動視察のため活動地を訪問しました。
保健ボランティア会議、母子保健ボランティアの家庭訪問活動、チュックサック地区・ティポー地区で建設したトイレを見学して頂き、プロジェクト完了直前の現在ではどの活動も保健センターやボランティアが主導で活動を実施できている様子をご覧頂きました。
また、視察の後、保健センタースタッフと保健・母子保健ボランティアとのインタビューセッションの時間も設け、PHJの3ヵ年プロジェクトの成果や、自分たちがどう意識が変化したなど話し合いました。また、今回の視察では州保健局母子保健チーフのDr.バトゥにも随伴頂きました。
與那嶺書記官より、「ぜひ活動を持続させるよう期待している」というメッセージが直接伝えられ、Dr.バトゥからも「PHJが育成した母子保健ボランティアのリフレッシュ・トレーニングを州保健局で開催できるようにユニセフからの資金支援をもらえるように交渉したい。保健ボランティアのトレーニングと会議支援を州保健局の予算に組み入れた」などの言葉を聞くことができました。
視察先のタノッチュム保健センターにて記念撮影
(左端から:與那嶺書記官、保健センター長、Dr.バトゥ、保健ボランティア2名、林、助産師、ソルンナ)
チュックサック保健センターでのインタビューセッションの様子
プロジェクトの完了に向けて
■プロジェクト完了調査
プロジェクトのキーパーソンである保健ボランティア、母子保健ボランティア、伝統的産婆の各グループ対して、プロジェクトがもたらした意識や村の変化や、成果などを聞き出すグループインタビューを実施しました。
「変化]「効果」「持続性」の3つのカテゴリーで質問を準備し、計15項目程度の問いに対してそれぞれのグループが自由に話し合いました。
保健ボランティアのグループインタビューの様子
■保健搬送システムの村会議
運営に課題が残されていたタノッチュム地区Thmei/Bantea Chas村の保健搬送システムにおいて、課題を村全体で話し合う村会議を運営委員会が開きました。
大きな課題としては会員費をきちんと集金できないことだったのですが、運営委員会で何度も話し合い、このような村会議を開いていっぺんに会員費を集金しよう、との結論になりました。
村会議では、保健搬送システムの意義や、会員をきちんと支払うことでシステムの持続性が増すといったようなメッセージが再度伝えられました。
村の運営委員が村人から会員費を集めている様子