洪水の発生にともなう健康被害予防の支援活動の開始

カンボジア洪水子ども支援募金にもありますが、2018年8月よりメコン川流域で洪水が発生しPHJの事業対象地の一部でも、洪水により地域の大部分が水没し、多くの住民とその家畜が主要道路沿いの家屋付近に密集し避難生活を余儀なくされています。
水没したエリアでは飲み水や生活用水として使われている水が排せつ物などで汚染されている状況です。もともと脆弱な農村地の衛生環境がさらに悪化し、子どもの健康状態への影響が懸念されています。

道路も冠水し移動が困難
1階部分が冠水し、そこで泳ぐ子供たち

PHJでは、このたび国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM)国際医療協力局の調査チームとともに、緊急物資支援の配布と、重篤な急性低栄養、繰り返す下痢などの重篤な感染症兆候のある2歳未満の子どもの早期発見・搬送と、健康教育による村人の健康被害の予防啓発活動を実施しています。

NCGMチームによる健康診断
水没を免れた幹線沿いの集会所に集まって、身体計測(身長、体重、上腕周囲径)を受ける子ども。
水の配給

 

現地への事業の引継ぎ会議を実施

PHJがコンポンチャム州ストゥントロン保健行政区で行っている事業は最終段階に入り、現地が自力で事業を継続していける体制を整えています。そこで6月にはPHJが実施してきた4年間の活動の引継ぎ会議を開き、保健行政区のスタッフとともに話し合いました。

PHJは保健センターの運営やスタッフや助産師の連携会議、村における保健教育など8つの活動を実施してきました。現地側が主体的にこれらの活動を続けることが重要なため、丸投げするのではなく、どのような形態であれば継続できるかを話し合いました。
またこうした活動を統括する立場にある保健行政区自体の運営能力(事業マネジメント、会議運営、情報 収集と分析)の強化活動についても見直しを行いました。

保健行政区の年間計画の過去6か月間の進捗状況を振り返っている様子
保健行政区の年間計画の過去6か月間の進捗状況を振り返っている様子

栄養たっぷり!お粥の調理実習

村での調理実習キャンペーンを行いました。
この活動は、母子を含めた多くの女性に栄養ある子供のための食事の調理を広めていくために、月に1回1つの村で離乳食となる栄養豊富なお粥の調理を母子保健ボランティアと実践するというものです。
2歳以下の子供とそのお母さんのための活動ではありますが、とくに限定せずに呼びかけたところ
対象の母子の祖母の年代の女性や中学生なども以前より多くの女性と男性も数名、合計36名が参加してくれました。

様々な世代の女性が集まって調理実習スタート

 

中学生も調理をお手伝い

母子保健ボランティアは参加者と楽しくコミュニケーションを取りながら調理を行い、調理後は子供たちも含めて試食しました。

母子保健ボランティアとお母さんたちが協力して調理します

 

子供たちも試食。おいしいかな?

子供からおばあちゃんまで幅広い年代が集まり栄養たっぷりなお粥の作り方を実践することができました。

正しく説明できてる?母子保健ボランティアの家庭訪問

母子保健ボランティアによる家庭訪問をモニタリングしました。
この家庭訪問は母子保健ボランティアが妊産婦さんを訪問して保健知識の強化や意識改善を図る大切な活動であり、母子保健ボランティアが正しい知識をしっかり説明できているかPHJスタッフがチェックしました。
モニタリングは妊娠期と産後の2種類があり、3村で20人の母子保健ボランティアを対象となりました。
▼妊婦さんに説明する母子保健ボランティアをモニタリング


▼産後の家庭を訪問し新生児のケアについて説明しているところ

モニタリングをする中で健康を損なう恐れのある伝統的医療を続けているケースも確認され、今後も母子保健ボランティアと協力して正しい知識を普及していくことの重要性が感じられました。
今回モニタリングを行った母子保健ボランティアの保健教育スキルは妊婦健診、産後検診ともに高得点でした。
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栄養トレーニングでお粥づくり

子供の健康な成長支援(パイロット事業)の活動が始まっています。
この事業は生まれてから2歳までの子供達が質の良いケアとコミュニティのサポートで、
健康な成長と発達を遂げることを目標としています。
このコミュニティを支える核となる母子保健ボランティアを対象に
栄養に関するトレーニングを実施しました。
州保健局の担当者や保健行政区の母子保健担当者 合わせて3名がトレーナーとなり、2日間にわたり講義と実習が行われました。

講義は質疑応答を交えながら和気あいあいと

2歳以下の子供とその母親への教育内容で
1日目は「栄養や食品、母乳栄養や衛生に関する講義」
2日目は、「栄養豊富な食品について、生活における衛生、食品の安心について、栄養豊富な食事の作り方について」でした。

手洗いの正しいやり方を実践

2日目の栄養豊富な食事の作り方については、6か月児へのお粥の作り方の調理実習を参加者全員で行いました。

魚と肉の2種類のベースを作った。 肉は塊肉をひき肉にするところからスタート
協力して様々な食材をみじん切りに
お粥の出来上がり

参加者は熱心に講義に耳を傾け、意見を述べたり質問をしており、調理実習でも協力して調理工程をこなしていました。
参加者の事前テスト平均は45.5点、事後テストは84.9点で、知識もしっかりと身についたことが確認できました。

参加した母子保健ボランティアの皆さんたち

助産師連携会議の進捗

12月末の2日間に保健行政区にて12保健センターの助産師を集めて助産師連携会議を開催しました。助産師21名がこの会議に参加しました。
会議ではまず、保健行政区の母子保健担当者より、助産師モニタリング時の問題点のフィードバックが行われ、健診混雑時の手洗いの徹底ができていないことがトピックとして取り上げられました。

各保健センターからの問題事例の報告とケーススタディでは、早産、妊娠高血圧症、胎盤排出遅延などの搬送事例や、伝統的産婆が出産介助した後で問題が起き助産師が呼ばれたケースなどが話合われ、州保健局からのトレーナーを交えて、今後どのように対応したらよいのかが話合われた。

午後には家族計画で使われる避妊具挿入についての講義と実技演習がトレーナーによって行われ、地方病院助産師も各自の演習のサポートをする様子が見られました。

本ページに掲載されている写真は、写真家の久保 年弘氏の撮影によるものです。
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母子保健ボランティアによる家庭訪問時のスキルチェック

母子保健ボランティアは妊産婦への家庭訪問で保健知識強化を図り、保健センターの利用を促すという、事業の中でも大切な役割を担います。
この家庭訪問の際、母子保健ボランティアが妊産婦さんに何をどのように伝えるかが重要なのは言うまでもありません。

そこで2つの保健センターの管轄エリアの母子保健ボランティアの家庭訪問モニタリングを始めました。
このモニタリングでは各母子保健ボランティアに妊婦あるいは産後の女性の家庭訪問を行ってもらい、そこで実際の保健教育と情報収集の様子をチェックします。
モニタリングの際にはレポート等の記録についても確認を行っています。

母子保健ボランティアのスキルについては経験の差などもあり、チェックの結果はややばらつきがある、活動へのモチベーションにかなりの差がある、などの状況がこのモニタリングから見えてきました。
母子保健ボランティアの担い手である女性たちは、自身の農作業や短期出稼ぎなどの合間を縫って、このような地域を支える活動に関わっているという状況を踏まえて、これらの課題に向き合う必要があるようです。

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「困ったときどうする?」母子保健ボランティア会議

母子保健ボランティアが各保健センターで活動状況の確認と月ごとのレポート作成と記載内容の確認をしたあと、助産師を交えて対応が難しかったケースや妊産婦の反応について話合いをしました。

たとえば
・妊娠中に必要な鉄剤の服用を止めてしまう
・陣痛開始前に保健センターに行き一度自宅に戻った数日後、破水兆候に気づかずにそのまま自宅待機を続けようとしていた
・5人以上の出産歴と高齢というリスクがありながらも交通手段と金銭的問題から伝統的産婆を呼び自宅出産した

などが事例として話し合われました。
これに対し、助産師がどのように対処すべきかをアドバイスしたり、お互いに解決策を話し合いました。現場で発生した課題をクリアにして次の活動に活かす流れができているようです。

助産師育成・強化の様子

【助産師連携会議】
9月末の二日間にわたり、ストゥントロン保健行政区の保健センター勤務の助産師を対象に助産師連携会議を開催しました。
会議の中では保健センターでの搬送事例の共有が行われ、また保健行政区母子保健担当者が問題事例に関する改善方法の提示をしていました。

その後産後検診・新生児健診に関する講義と実技演習が行われました。
記録の取り方や新生児の観察方法などについて確認を交えながら参加者が真剣に講義に耳を傾け、演習を行う様子が見られました。

【准助産師スキルモニタリング】
保健センターで働く准助産師対象に能力強化トレーニングを行い(トレーニング実施の様子はこちら)、その後も准助産師のスキルを定期的にモニタリングしています。9月に3保健センターにて5名の准助産師を対象にモニタリングを行いました。
准助産師のスキルは高水準に保たれており、健診時の対応や観察も注意深く行っている様子が確認され、継続的なモニタリングにより良好な状態が保たれています。

保健センターで出産したお母さんの声

保健センターでの健診や出産を啓蒙するキャンペーン行っており、保健センターでの妊婦健診や出産、産後検診をした女性に奨励グッズを提供しています。実際に保健センターで出産した2人のお母さんの声をご紹介します。

Srey Ounさん(26歳)
「すでに子どもが2人いて、3人目を8月18日にオームルー保健センターで産みました。同じ村に伝統的産婆もいますが、すでに高齢で、毎日寺に通って修行しているため、分娩介助はしていません。また、出産で不測の事態にあった時、伝統的産婆は対応できないと思い保健センターで産むことにしました。また今はギフトセットがもらえることも魅力でした。
分娩前には、助産師はきちんと血圧を測ったり、器具を使って体調を調べてくれましたし、産後もきちんとケアしてくれました。妊娠中の食事や、休息をとること、重い荷物を持たないことなどいろいろなアドバイスをくれました。産後に具合が悪くなったらすぐに保健センターに来るように言ってくれて、助産師は非常に頼りになると思いました。
保健センターは清潔で、サービスも安いです。産後に鉄剤をくれました。助産師さんもいい人たちなので、今後も保健センターで産みたいと思いました。」

Lang Dinさん(36歳)
「私は子どもが4人いて、9月10日に7年ぶりに5人目の子供となる赤ちゃんを産みました。4人の子どもは全員自宅で産みましたが、今回はオームルー保健センターで産みました。
村は保健センターから12キロ離れていますが、病院などの他の施設はもっと遠く、保健センターが一番近くて衛生的で安全な分娩サービスを提供しているところです。また、プライベートクリニックよりも安く分娩サービスを受けることができます。今では伝統的産婆よりも助産師を信頼しています。また、保健センターではサービスを受けるとギフトセットをもらえるため保健センターを選びました。」
 
保健センターで出産した理由が、2人とも万一の際にきちんと対応できるため、ということを言っていて、きちんと保健教育で伝えていることが認識されていることがわかりました。奨励グッズは一つのきっかけにすぎませんが、ここなら安心・安全だとお母さんに気づきを与えられる良い機会だと思います。
この奨励グッズキャンペーンを通してカンボジアの安全なお産を応援してください。関心のある方はこちらへ。


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