「困ったときどうする?」母子保健ボランティア会議

母子保健ボランティアが各保健センターで活動状況の確認と月ごとのレポート作成と記載内容の確認をしたあと、助産師を交えて対応が難しかったケースや妊産婦の反応について話合いをしました。

たとえば
・妊娠中に必要な鉄剤の服用を止めてしまう
・陣痛開始前に保健センターに行き一度自宅に戻った数日後、破水兆候に気づかずにそのまま自宅待機を続けようとしていた
・5人以上の出産歴と高齢というリスクがありながらも交通手段と金銭的問題から伝統的産婆を呼び自宅出産した

などが事例として話し合われました。
これに対し、助産師がどのように対処すべきかをアドバイスしたり、お互いに解決策を話し合いました。現場で発生した課題をクリアにして次の活動に活かす流れができているようです。

助産師育成・強化の様子

【助産師連携会議】
9月末の二日間にわたり、ストゥントロン保健行政区の保健センター勤務の助産師を対象に助産師連携会議を開催しました。
会議の中では保健センターでの搬送事例の共有が行われ、また保健行政区母子保健担当者が問題事例に関する改善方法の提示をしていました。

その後産後検診・新生児健診に関する講義と実技演習が行われました。
記録の取り方や新生児の観察方法などについて確認を交えながら参加者が真剣に講義に耳を傾け、演習を行う様子が見られました。

【准助産師スキルモニタリング】
保健センターで働く准助産師対象に能力強化トレーニングを行い(トレーニング実施の様子はこちら)、その後も准助産師のスキルを定期的にモニタリングしています。9月に3保健センターにて5名の准助産師を対象にモニタリングを行いました。
准助産師のスキルは高水準に保たれており、健診時の対応や観察も注意深く行っている様子が確認され、継続的なモニタリングにより良好な状態が保たれています。

保健センターで出産したお母さんの声

保健センターでの健診や出産を啓蒙するキャンペーン行っており、保健センターでの妊婦健診や出産、産後検診をした女性に奨励グッズを提供しています。実際に保健センターで出産した2人のお母さんの声をご紹介します。

Srey Ounさん(26歳)
「すでに子どもが2人いて、3人目を8月18日にオームルー保健センターで産みました。同じ村に伝統的産婆もいますが、すでに高齢で、毎日寺に通って修行しているため、分娩介助はしていません。また、出産で不測の事態にあった時、伝統的産婆は対応できないと思い保健センターで産むことにしました。また今はギフトセットがもらえることも魅力でした。
分娩前には、助産師はきちんと血圧を測ったり、器具を使って体調を調べてくれましたし、産後もきちんとケアしてくれました。妊娠中の食事や、休息をとること、重い荷物を持たないことなどいろいろなアドバイスをくれました。産後に具合が悪くなったらすぐに保健センターに来るように言ってくれて、助産師は非常に頼りになると思いました。
保健センターは清潔で、サービスも安いです。産後に鉄剤をくれました。助産師さんもいい人たちなので、今後も保健センターで産みたいと思いました。」

Lang Dinさん(36歳)
「私は子どもが4人いて、9月10日に7年ぶりに5人目の子供となる赤ちゃんを産みました。4人の子どもは全員自宅で産みましたが、今回はオームルー保健センターで産みました。
村は保健センターから12キロ離れていますが、病院などの他の施設はもっと遠く、保健センターが一番近くて衛生的で安全な分娩サービスを提供しているところです。また、プライベートクリニックよりも安く分娩サービスを受けることができます。今では伝統的産婆よりも助産師を信頼しています。また、保健センターではサービスを受けるとギフトセットをもらえるため保健センターを選びました。」
 
保健センターで出産した理由が、2人とも万一の際にきちんと対応できるため、ということを言っていて、きちんと保健教育で伝えていることが認識されていることがわかりました。奨励グッズは一つのきっかけにすぎませんが、ここなら安心・安全だとお母さんに気づきを与えられる良い機会だと思います。
この奨励グッズキャンペーンを通してカンボジアの安全なお産を応援してください。関心のある方はこちらへ。

保健行政区の運営に関する評価と計画策定

保健行政区の運営に関するモニタリング評価および計画策定ワークショップ(3日間)を開催しました。保健行政区スタッフ4名、3保健センターから保健センター長と助産師各2名、合計10名が参加しました。
7月10日(1日目)は、午前中に事業運営に関する講義を行い、その後PHJの活動指標と過去3年間の成果を共有。その結果を使い、保健センターごとに「モニタリング評価演習」を行い、結果発表しました。

7月18日(2日目)は、午前中に保健センター長と助産師のチームが他保健センターを訪問し管理状況を確認しました。
午後はその訪問での観察事項を各チームでまとめて発表し、それに対して各保健センター長が状況説明を行った。1日目の発表、2日目の観察を基に、各保健センターでマネジメント改善のゴールと目標を設定しました。

7月19日(3日目)は、保健行政区の年間計画の見直しを行いました。
昨年の12月のワークショップ以来、年間計画表の内容改善を共に進めていますが、今回は量的成果、質的成果を具体的に設定する作業を行いました。今回は年間計画の一部のみ見直し作業を行ったが、他のセクションに関しても同様の作業で保健行政区長自ら修正できると考えています。
 

母子保健ボランティア育成 4日間集中トレーニング

2か所の保健センターで4日間の母子保健ボランティアの育成トレーニングを開催しました。
トレーニングの内容は、女性の産後ケアや新生児ケアの知識と家庭訪問時の保健教育のためのスキル、レポート作成や保健教育の実践を織り込んだものです。
州保健局からトレーナーを招き、保健行政区母子保健担当者や保健センター助産師も同席しました。
▼講師が家庭訪問時のレポートの書き方についての説明をしているところ

▼ボランティアが、産後の家庭訪問を想定した保健教育の実践を
保健センターで前日出産した女性に対し行っているところ

▼ゲームでトレーニング合間にリフレッシュ

▼オームルー保健センターの参加者との集合写真

どちらの保健センターでも参加者は集中して講義を受け、母子保健ボランティアの役割を学ぶにつれ、より責任感をもって取り組む様子が見られました。
参加できなかった母子保健ボランティアには個別訪問し、継続の意思を確認しながら、今回の講義のフォローアップをしていきます。

助産師連携会議の開催

助産師のスキルアップに向けて情報共有や研修を行う「助産師連携会議」が、5月18,19日にストゥントロン行政区会議室にで行われました。
両日で、管轄エリア内の保健センター所属の30名の助産師のうち27名が会議に参加しています。
まず、保健行政区の母子保健担当者からは、通常の業務の観察をもとに、特に感染管理(手洗いの徹底、滅菌管理)、妊婦照会時の情報伝達の方法、分娩記録の正しい記載の徹底などが課題となっていることが報告されました。

チームワーク改善を考えてもらうため、チームワーク強化を狙ったゲームも実施しました。

分娩記録の正しいつけ方の演習も行っていました。

事例を使って、各自配られた記録表に記載する練習をしているところ。

この会議の内容が助産師さんたちの普段の業務によりよく反映されればと思います。

准助産師のスキルを確認

保健センターにて准助産師の妊婦健診、家族計画、産後検診・乳児健診のスキルをチェックリストをもとに
確認しました。
保健行政区の母子保健担当者ととも准助産師のスキルをチェックします。

・准助産師さんによる妊婦健診

・准助産師による産後の子宮復古(分娩後に子宮が妊娠前の状態に戻ること)の観察の様子

・准助産師さんによる産後検診の様子

・産後のお母さんたちへの説明を行う准助産師さん

トレーニングの実施や毎月のモニタリングにより、
妊婦健診や家族計画サービスのスキルは一定水準以上のレベルを保てるようになってきました。
現在は産後検診/乳幼児健診の際の、赤ちゃんの観察やアセスメントが課題です。
PHJでは現場の准助産師の習熟度に合わせて、チェックリストを改訂するなど、モニタリングの質強化にも努めています。

母子保健ボランティアの育成トレーニングを実施

母子保健ボランティアとは、村に住む女性の中から選出され、妊産婦への家庭訪問で保健知識強化を図り、保健センターの利用を促すという、事業の中でも大切な役割を担います。
この母子保健ボランティアを育成するトレーニングが2月末から3月にかけて行われました。
トレーニングは妊婦健診の知識とコミュニケーションスキルについての講義、ディスカッション、実践を織り込んだ3日間のトレーニングが保健センターで行われ、6月と7月には産後検診と乳児健診に関するトレーニング4日間を予定しています。
対象となるのは3つの保健センターにて管轄する村の母子保健ボランティアさん合わせて68名。当日は州保健局からトレーナーを招き、保健行政区母子保健担当者や保健センター助産師も同席しました。
■3日間のトレーニングの内容
【1日目】
カンボジアの母子保健の統計や新生児ケアが重要な理由についての講義、グループディスカッション(周産期の死亡を防ぐために必要なこととは何か)、事前テスト

ケーススタディのグループワークの様子
【 2日目】
妊婦健診の重要性について、フリップチャートの使い方、ケースを想定した保健教育の実施シミュレーション、母乳栄養の意義、母乳哺育介助手技の実演
【3日目】
村でのフィールドワーク(妊婦に対する保健教育の実践)、3日間のレビュー、事後テスト

(実際に村に行き、フリップチャートを使って妊婦さん相手に保健教育を行う様子)
参加した母子保健ボランティアさんたちは講義に集中し、積極的に話し合いをしたり、グループワークでは活発に意見を出し合う様子がみられました。
トレーニングの事前から事後のテストの平均がグループごとに30点以上アップしていました。

次回のトレーニングにも意欲的に参加し、頼もしい母子保健ボランティアさんが育ってくれればと思います。

保健センターの井戸の掘削工事

カンボジアでは一般診療や分娩が行われる保健センターといった医療施設でさえ、水を確保するのが難しい状況です。
支援地にあるアレアッタノー保健センターではこれまで二つ井戸(手動でくみ上げるタイプ)
がありましたが、すでに水が出ない状態でした。そのため、保健センターの
スタッフがこれまでは水を買ってきて、しのいできました。
そこで、今回新たに電動で水をくみ上げるタイプの井戸を作るため掘削工事をしました。

地面に穴をあけて、パイプを通し、そこにポンプを差し込んで、水を吸い上げる仕組みです。

完成後の井戸

保健センターの裏にあるタンクと井戸をパイプでつなげ、モーターの電源を入れるとタンクに水が溜まるようになっています。
もちろん日本と比べればまだまだ厳しい環境ではありますが、
井戸による水の供給という重要なインフラが整った保健センターでよりよいサービスやケアが提供できればと思います。

専門家によるワークショップ開催

(保健行政区のマネジメント能力向上へ)
農村部の保健センターや病院を統括する保健行政区。そのマネジメント能力や質は、保健センターでの妊産婦や乳幼児に対する継続ケアの提供に大きく影響します。
PHJは支援活動の一環として、保健行政区の職員と協働して、事業マネジメント、会議運営、情報 収集と分析の強化支援を行っています。
2016年12月末に岡本美代子先生(順天堂大学)を招き、PHJの支援地であるストゥントロン保健行政区の管理職メンバーを対象に「マネジメントの基本を学び次年度年間計画を再構築する」ことを主目的として、3日間のワークショップを実施しました。
ストゥントロン保健行政区からは、保健行政区長、副保健行政区長、母子保健担当チーフ、結核予防担当チーフが参加し、PHJからは現地スタッフ6名と駐在スタッフ3名が参加しました。
ワークショップは3段階で、1:良い事例を学んで議論する、2:マネジメントの基本概念を理解する、3:マネジメントの知識を活用し2017年の計画を立案する というものです。
まず、近隣のチョンプレイ保健行政区の視察では、地域の母子保健の課題とそれに対してどのような手段で問題解決を図ったか教示してもらいました。

(チョンプレイ保健行政区を視察し、母子保健担当チーフより経験談を教えてもらう。)

(チョンプレイ保健行政区の保健センターの前で、全員集合)
視察からの学びを活かし、ストゥントロン保健行政区の現状課題や強みを明確にすることができました。

(チョンプレイ保健行政区への視察を通して得られたことを、全員参加で大きなホワイトボードに提示し、整理をしました。)
上記の課題を効果的に解決するために、「マネジメントの基本」の講義でしっかり基礎知識を理解した上で、次年度年間計画の見直しをしてみました。
このことにより、明確な目標を設定し、いかにそれに繋がるロジックを考えて計画を立てるということが、期待する成果を生み出すために大事であるかを学びました。

(ストゥントロン保健行政区メンバーを中心に、次年度計画の見直しを行いました。)
このように段階的できめ細かなワークショップにより、参加者全員でマネジメントに対する理解を深め、能力を向上させることができました。
ワークショップを終えたストゥントロン保健行政区長は「マネジメントは難しかったが、具体的にわかりやすく説明してもらったので理解できた。保健センター長を集めてワークショップを開きたい。そうすると、今起こっている問題が解決できると思う。」という前向きなコメントをいただきました。
マネジメント能力の向上はもとより、PHJスタッフと保健行政区のメンバーがワークショップを通して課題を共有し協働して計画立案できたことで、一体感が生まれたことも大きな収穫だったのではないかと感じます。


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