お母さんと子どもの健康をささえるダイアリー作成

PHJカンボジア事務所ではダイアリーを制作し、
新年にPHJの活動に関わる様々な人、たとえばボランティアや保健センターのスタッフなどに配布します。

(2018年版ダイアリー)

このダイアリーはスケジュール管理やメモといった機能だけなく、PHJの活動紹介、母子の健康に関する知識もイラスト付きで含まれています。
ボランティアや保健センタースタッフは、自分の活動管理や情報整理のために活用し、今や会議などの活動には欠かせないアイテム。
誰もが手帳を持っている日本と違い、カンボジアの農村地域に住む人たちにとっては重要な1冊となっているようです。

(2018年版ダイアリー中面1)
(2018年版ダイアリー中面2)

今年は、事業対象が“お母さん”だけでなく“子ども”も追加されテーマを拡大したので、
ダイアリーの中身も新しく見直し、みんなで工夫して仕上げています。
12月の完成目指して、スタッフ中心となって頑張って取り組みました。

どんな出来上がりになるかは新年になってからのお楽しみです。

「1年の振り返りと次の目標」助産師・補助助産師会議にて

PHJでは助産師と補助助産師の連携を図ることを目的に2015年より助産師・補助助産師会議を定期的に開催しています。
ミャンマーの助産師と補助助産師の違いは教育年数が異なることですが、助産師が政府職員であることに対し、補助助産師はボランティアであることも大きな違いです。(補助助産師については村の頼りになるボランティア 補助助産師トレーニングの開催参照)
助産師が村へ予防接種や各種保健サービスの提供に行った際に、補助助産師は助産師をサポートしますが、それ以外に連携を図る場が少ないため、地域保健センター(Rural Health Center)を拠点に会議を開催しています。

今回の会議では1年間の活動の振り返りや目標の達成度を共有しました。
過去1年間の会議において、助産師・補助助産師会議の参加率は達成できていることがわかりました。
一方で、母子保健教育の参加者が目標値以下だったため、参加率を向上させるためのアイディアを出し合い、
村のボランティアである母子保健推進員に対象者を集めるように協力を依頼する、出席者に景品を配布するという案などが出ました。
また、2年目の活動について個々人の目標を立ててもらいました。
たとえば、母子保健教育を計画通り開催することと、参加率の上昇を目指すこと、伝統的産婆による自宅分娩をなくし、病院や保健施設での出産を増加させる、といった目標が挙げられていました。

助産師や補助助産師は村人の健康を守るため、地域の末端つまり最前線で日々働いています。
助産師・補助助産師会議を通して、助産師と補助助産師のコミュニケーションが円滑になり、協働して仕事を行える機会が増えることで、地域の健康増進に繋がることを望んでいます。

多岐にわたるPHJの活動

今月の活動の中で2つを紹介します。
一つは村での妊産婦さんの支援の活動。またもう一つは行政との情報共有の活動。
地域での包括支援活動にはどちらも欠かせない活動です。
【母子保健ボランティアの活動を確認】
母子保健ボランティアによる家庭訪問時の保健教育が、適切に実施できているかどうかをモニタリングしました。
チェックリストに沿って確認し、PHJスタッフからボランティアへフィードバックも行います。


【州内の行政官とNGOの月例会議】
またコンポンチャム州の行政とNGOの情報共有のために実施される月例会議にてPHJカンボジアスタッフが2014年から4年間の活動の成果を報告しました。

 新たなる挑戦~遠隔地での母子保健推進員育成~

2018年10月17日より2年目の事業(*1)がスタートし、アイジェという遠隔地での母子保健推進員の育成が始まりました。
1年目の事業ではミャウッミェイ地域ですでに131名の母子保健推進員を育成しています。(参照⇒2018年7月の活動報告 お母さんと子供の健康を守る「母推さん」の育成へ
2年目からは、アイジェ地域の全34村から100名近い母子保健推進員(*2)を育成します。この地域は、活動地域の中でも端にあり、かつ面積も広いため母子保健推進員を集めるのは容易ではありません。
普段から助産師が村に行った時に仕事を手伝ってくれている女性たちを中心に選抜することで、ようやく100名近い女性を集めることができました。そして、母子保健推進員養成者研修を受けたヘルスアシスタントや助産師を講師として、2日間の研修を行いました。

研修では母子保健推進員の役割や担うべき責任、コミュニケーションの取り方や、母子保健の基礎的な知識、レポートの書き方などを伝えました。
コミュニケーションの取り方を学ぶため、母子保健推進員が妊婦さんの家を訪問するという設定で、ロールプレイも行ってもらいました。

雨季の時期は助産師が訪問できない村々もいくつかあるため、村にいるお母さんと助産師の橋渡し役となる母子保健推進員の役割はとても重要です。母子保健推進員の活動がこの地域に根付くようにPHJは今後もサポートしていきます。
*1 本事業は日本NGO連携無償資金協力の元、実施しています。
*2 母子保健推進員は国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)がミャンマー保健省と共に定めたボランティアの一形態で、村の妊婦や産後の女性の所在を確認し、助産師と連携をはかり、妊婦や産後の女性が適切な時期にケアを受けることができるような役割を担っています。

11月30日(金)PHJミャンマー活動報告会  

「ミャンマーの農村の暮らし、母子の健康を守る活動とは」

産後間もない女性と赤ちゃん

ピープルズ・ホープ・ジャパンでは2014年からミャンマーのネピドー近郊の農村部にて母子保健分野の支援活動を行っています。
今回はPHJミャンマー事務所で働いている志田保子がスピーカーとなって、ミャンマーの農村地の暮らしやPHJの取り組みについて映像や写真を使ってご紹介します。活動についてはもちろん、駐在員ならではの現場での体験をお話しします。ミャンマーのお菓子も用意し、後半は茶話会のような雰囲気でお話できればと考えておりますので、お気軽に参加ください。
■日時:11月30日(金)18時半から20時まで(茶話会含む)
■場所:新宿NPO協働推進センター 102会議室  https://snponet.net/
住所)新宿区高田馬場4-36-12 ・JR山手線『高田馬場』駅より徒歩15分 ・JR中央線『東中野』『大久保駅』より徒歩15分
■ 定員:15名程度
■タイムスケジュール
18:30〜 参加者・スピーカーの自己紹介
18:45〜 スピーカーによる活動報告(約40分)
19:25〜 休憩
19:30〜 質疑応答・交流(お菓子付き
20:00ころ終了
■参加費:500円
■お申込み: info@ph-japan.org まで件名に2018ミャンマーと記載し、本文にお名前、電話番号、聞きたい話や質問したいことなどあれば記載してお申込みください。フェイスブックのイベントページでも参加申し込み可。
■スピーカー: PHJミャンマー事務所駐在員 志田保子
助産師、看護師として6年間の病院勤務を経て、2009年、青年海外協力隊員としてバングラデシュに2年間滞在。長崎大学大学院国際健康開発研究科修了。2016年10月にPHJへ入職。2017年5月よりミャンマー駐在、プログラムマネージャー。

左から二人目が志田
ミャンマーの農村地で暮らす家族
サブセンターでの母子保健教育

洪水被害を受けた地域での支援活動(健診、健康教育、水の配布)

9月から10月にかけて実施された健診キャンペーンの活動について報告します。
事業地の一部に、数年に一度の大洪水による被害が発生し、衛生環境が悪化に伴う子どもの健康状態への影響を最小限にするために、2歳以下の子どもを対象に、健康診断・健康教育と、水の配布を実施しました。

目的は
・脆弱人口である子どもへ飲料水の配布し、安全な水へのアクセスできる環境を促進する。
・低栄養・下痢症状の子どもを早期発見・搬送する。
・洪水に関連した健康教育を行い、村人の疾病予防行動を啓発する。
健康診断の結果は2段階に分け、重症急性低栄養で緊急に受診を要する場合は診断当日に保健センターへ紹介し、その後個別の栄養指標の算出して分類し、低栄養で受診を要する場合は水の配布時に保健センターを照会しました。
こちらの活動は「カンボジア洪水子ども支援募金」として支援できますので、ご協力お願いいたします。
【活動期間】
健診・健康教育:9月11日~9月21日 ※9月16日(日)を除く
水の配布   :9月18~10月3日 ※土日祝日を除く
【対象地と対象者】
クポッタゴン保健センター、ピァムゴッスナー保健センター管轄村16村の2歳以下の子ども
【活動内容】
1)集団健康診断:身長・体重・上腕周囲径の計測と質問票を用いた問診
2)集団健康教育:下痢について
3)緊急物資支援:2歳以下の子ども当たり40L飲料水ボトル配布
【実施協力者】
•NCGM(国立国際医療研究センター国際医療協力局:以下NCGM)栄養調査チーム フィールドスタッフ
•保健行政区長・各村の村長・保健ボランティア・住民(会場提供など)
【実施内容】
〇健康診断・健康教育へ参加した子供:427人(クポッタゴン214人 ピアムゴッスナー213人)
〇20Lの飲料水ボトルの配布数:958本が479人の子どもに届けられた。
1)集団健康診断
身体計測と保健センターへの照会
国立国際医療研究センター栄養調査チームが、子どもの主養育者を対象に子どもの既往歴などについて質問票を基にインタビューを実施し、その後、身長・体重・上腕周囲径を計測した。

インタビューと身体計測の後に、1.現在下痢症状がある、または、2.重症急性低栄養かどうかを判別するために、PHJスタッフがスクリーニングシートを用いて、受診を必要とする子どもの選定を行った。
【選定結果1】
健診当日に下痢症状のある子ども16例(PKS管轄村9人、KTN管轄村7人)を保健センターへ照会した。その他、2例の上腕周囲径で重症急性低栄養の基準を満たす子どもが認められたが、すでに受診し経過観察中だったため、今後の通院継続の必要性について改めて説明した。

2)集団健康教育
洪水に関連した健康被害の下痢を題目として、PHJスタッフによる健康教育が行われ、集まった対象年齢の子どもを持つ養育者が健康診断の前後の時間を利用し参加した。

3)緊急物資支援
健診・健康教育の活動に参加した子ども(一部、私事で健診・健康教育には参加できなかったケースも含む)に配布された、引換券と交換に子ども一人当たり40Lの飲料水の配布を行いました。当日取りに来られなかった人もいましたが、保健ボランティアの協力により、すべての引換券をもった子どもに安全な水を届けることができました。

【選定結果2】
水の配布と共に、健康診断の結果を個別に配布し、受診が必要な子どもには養育者に紹介状を渡しました。クポッタゴン保健センターでの低栄養の子どもの割合は27.6%、ピアムゴッスナー保健センターでは32.9%でした。
【活動を終えて】
水と健診結果の配布では、興味の対象は主に水をもらうことだろうと予測していましたが、真剣に子ども健診結果を見ているお母さんが多く見られました。
このような活動を通して、子どもの健康に少しずつ村のひとの関心が高ることを願います。

政府職員とのプロジェクト評価会議の開催

2017年10月よりタッコン郡で開始したミャンマー農村地域の母子保健サービス改善事業も1年が経過します。そこで、10月11日に保健省母子保健課、ネピドー公衆衛生局、タッコン郡保健局の職員と共に、会議を開催しました。この会議の目的は、プロジェクト1年目の活動の結果や成果、2年目の活動計画を共有し、プロジェクトの妥当性や、持続可能性を考えた活動を政府職員と協議することでした。

政府職員とのプロジェクト評価会議

活動は1.安全な分娩環境づくり支援、 2.医療者(特に助産師)のスキル向上、 3. 村での母子保健教育活動、4.村のボランティア育成と連携強化、5.政府職員との連携強化の5つを柱としています。
1年目の活動では主に、インバコンサブセンターの分娩室の建築、分娩台やオートクレーブなどの必須医療機器の供与、助産師卒後研修、補助助産師リフレッシュ研修、助産師によるサブセンターや各村での母子保健教育、村での母子保健活動に従事するボランティアとして「母子保健推進員」の育成などを行いました。
1年目の主な成果としては、分娩台や診察台などを寄贈したニャオトンアイサブセンターでは稼働から約7ヶ月足らずで、22件の新しい命が誕生したことや、助産師卒後研修で学んだ緊急時の処置により産婦さんの救命ができたこと、定期的に母子保健教育を開催することで、村のお母さんたちの助産師への信頼度が高まったことや、母子保健推進員が妊娠初期の妊婦を発見し、妊婦健診の受診率が少しずつ増えていることなどです。

サブセンターでの母子保健教育

今回の会議で議論されたことは、ミャンマーでの政策でもある1.施設分娩率を上げるアプローチとして現在の活動の妥当性、2.二年後のプロジェクト終了に向けて、持続可能性を考えた活動を行う、ことでした。
1に関しては地域でボランティアを育成し、助産師へ照会する仕組みは良く、併せて1年目から行っている助産師のトレーニングも継続してほしいこと、2は、多数いるボランティアの持続可能性を考えて、タッコン郡保健局と一緒に活動を行っていくことが議論されました。
プロジェクト開始から約半年が経過した時点に、保健省母子保健課の助言により、対象活動地をミャウッミェイ地域保健センター管轄地からタッコン郡全体へと拡大することになり、大変な苦労と労力を強いられましたが、タッコン郡保健局やネピドー公衆衛生局の協力もあり、苦難を乗り越えることができました。
2年目からは拡大した活動地域でも母子保健教育の開催や、母子保健推進員を育成します。1年目に得られた成果を他の地域へも拡大し、より多くの母子が健康に過ごせるようにPHJはサポートしていきます。

産後間もない女性と赤ちゃん

洪水の発生にともなう健康被害予防の支援活動の開始

カンボジア洪水子ども支援募金にもありますが、2018年8月よりメコン川流域で洪水が発生しPHJの事業対象地の一部でも、洪水により地域の大部分が水没し、多くの住民とその家畜が主要道路沿いの家屋付近に密集し避難生活を余儀なくされています。
水没したエリアでは飲み水や生活用水として使われている水が排せつ物などで汚染されている状況です。もともと脆弱な農村地の衛生環境がさらに悪化し、子どもの健康状態への影響が懸念されています。

道路も冠水し移動が困難
1階部分が冠水し、そこで泳ぐ子供たち

PHJでは、このたび国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM)国際医療協力局の調査チームとともに、緊急物資支援の配布と、重篤な急性低栄養、繰り返す下痢などの重篤な感染症兆候のある2歳未満の子どもの早期発見・搬送と、健康教育による村人の健康被害の予防啓発活動を実施しています。

NCGMチームによる健康診断
水没を免れた幹線沿いの集会所に集まって、身体計測(身長、体重、上腕周囲径)を受ける子ども。
水の配給

 


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