助産師連携会議の開催

助産師のスキルアップに向けて情報共有や研修を行う「助産師連携会議」が、5月18,19日にストゥントロン行政区会議室にで行われました。
両日で、管轄エリア内の保健センター所属の30名の助産師のうち27名が会議に参加しています。
まず、保健行政区の母子保健担当者からは、通常の業務の観察をもとに、特に感染管理(手洗いの徹底、滅菌管理)、妊婦照会時の情報伝達の方法、分娩記録の正しい記載の徹底などが課題となっていることが報告されました。

チームワーク改善を考えてもらうため、チームワーク強化を狙ったゲームも実施しました。

分娩記録の正しいつけ方の演習も行っていました。

事例を使って、各自配られた記録表に記載する練習をしているところ。

この会議の内容が助産師さんたちの普段の業務によりよく反映されればと思います。

助産師の卒後教育トレーニングを実施中

ミャンマーの助産師は助産師養成校を修了後に村の一次医療施設であるサブセンターに配属されます。新人であってもすぐに即戦力として働かなければならず、新人助産師の中には、学生時代に分娩を一件も介助することなく、現場に出ることになってしまう助産師もいます。周囲には頼れる先輩もほとんどいなく、自分一人で判断していかなければなりません。そして、助産師の卒後教育もままならないのが現状です。

(自宅分娩で赤ん坊を取りあげた助産師)
PHJでは2017年5月中旬より、タッコン郡の全助産師約41名を対象とした5日間の助産師トレーニングを5回に分けて行っています。
このトレーニングは2016年から約1年間に渡って行った助産師のスキルチェックの結果を基に構成されています。
妊婦健診や産後検診に関する項目で半分以下の助産師ができていなかった知識や技術の項目を復習することを目的としています。
さらに、このトレーニングでは講義に加え、演習にも力を入れています。模型を用いて分娩介助技術や新生児蘇生法のスキルチェックも行いました。

(分娩後の傷の観察方法について説明する産婦人科医)
休憩時間に、模型を使って分娩介助の練習を繰り返し行う熱心な助産師もいました。

(新生児蘇生法の講義)
研修を受けた助産師からは「産後出血時の対応や呼吸停止の新生児蘇生の演習を受けたことで、こうした緊急事態に対して自信がつきました」との声が聞かれました。

彼女たちが現場に戻った時に実際にどの講義や演習が役に立ったかをヒアリングしていきたいと思います。
>>本活動を支援する助産師教育募金へ

准助産師のスキルを確認

保健センターにて准助産師の妊婦健診、家族計画、産後検診・乳児健診のスキルをチェックリストをもとに
確認しました。
保健行政区の母子保健担当者ととも准助産師のスキルをチェックします。

・准助産師さんによる妊婦健診

・准助産師による産後の子宮復古(分娩後に子宮が妊娠前の状態に戻ること)の観察の様子

・准助産師さんによる産後検診の様子

・産後のお母さんたちへの説明を行う准助産師さん

トレーニングの実施や毎月のモニタリングにより、
妊婦健診や家族計画サービスのスキルは一定水準以上のレベルを保てるようになってきました。
現在は産後検診/乳幼児健診の際の、赤ちゃんの観察やアセスメントが課題です。
PHJでは現場の准助産師の習熟度に合わせて、チェックリストを改訂するなど、モニタリングの質強化にも努めています。

「出産体験を語る」助産診療センターの利用促進活動

助産診療センターでの出産件数をあげるため、カンタ―村の助産診療センターで母子保健教育と合わせて助産診療センターの利用促進活動を行いました。

自宅出産が当たり前だと感じている人に、助産診療センターで出産するメリットを理解してもらうのは至難の技。
そこで、実際に助産診療センターで出産した女性に、その体験とともにセンターで出産するメリットを語ってもらうことにしました。
協力してくださったのは4か月ほど前に助産診療センターで出産した34歳の女性。

彼女の話によると
以前は出産時に自宅で伝統的産婆さん(医療知識を持たない出産介助人)に介助してもらいましたが、今回は妊婦健診の際に助産師のすすめにしたがい助産診療センターで助産師に介助されて出産し、自宅での出産に比べてとても安全だと感じたとのことでした。
このようなリアルな体験をもとに助産診療センターでの出産に関する前向きな話を他の参加者と共有することができました。
今後は、出産体験の共有だけでなく、ツアー形式で助産診療センター訪問など予定しており、実際に見たり、聞いたりすることで助産診療センターの良さを肌で感じてもらい、助産診療センターの利用促進向上を図っていきます。

母子保健ボランティアの育成トレーニングを実施

母子保健ボランティアとは、村に住む女性の中から選出され、妊産婦への家庭訪問で保健知識強化を図り、保健センターの利用を促すという、事業の中でも大切な役割を担います。
この母子保健ボランティアを育成するトレーニングが2月末から3月にかけて行われました。
トレーニングは妊婦健診の知識とコミュニケーションスキルについての講義、ディスカッション、実践を織り込んだ3日間のトレーニングが保健センターで行われ、6月と7月には産後検診と乳児健診に関するトレーニング4日間を予定しています。
対象となるのは3つの保健センターにて管轄する村の母子保健ボランティアさん合わせて68名。当日は州保健局からトレーナーを招き、保健行政区母子保健担当者や保健センター助産師も同席しました。
■3日間のトレーニングの内容
【1日目】
カンボジアの母子保健の統計や新生児ケアが重要な理由についての講義、グループディスカッション(周産期の死亡を防ぐために必要なこととは何か)、事前テスト

ケーススタディのグループワークの様子
【 2日目】
妊婦健診の重要性について、フリップチャートの使い方、ケースを想定した保健教育の実施シミュレーション、母乳栄養の意義、母乳哺育介助手技の実演
【3日目】
村でのフィールドワーク(妊婦に対する保健教育の実践)、3日間のレビュー、事後テスト

(実際に村に行き、フリップチャートを使って妊婦さん相手に保健教育を行う様子)
参加した母子保健ボランティアさんたちは講義に集中し、積極的に話し合いをしたり、グループワークでは活発に意見を出し合う様子がみられました。
トレーニングの事前から事後のテストの平均がグループごとに30点以上アップしていました。

次回のトレーニングにも意欲的に参加し、頼もしい母子保健ボランティアさんが育ってくれればと思います。

取り残される妊婦さん

村で助産師さんが行っている予防接種の活動に同行させてもらいました。
今回訪問した村はGwe Pinという人口1220人、世帯数261のプロジェクト地域のうちの一つの村です。
プロジェクト地域のタッコンタウンシップでは、予防接種は各村、毎月1回行われます。
そのほとんどが保健・医療施設で行われるよりも、村に助産師さんたちが出向いて行うほうが多いのです。
また、この予防接種と合わせて村で妊婦健診を行うこともあります。予防接種は子どもだけではなく、妊婦さんも対象にしています。それは妊娠中に受けなければならない破傷風の接種が2回義務付けられているからです。そして、助産師さんが常駐するサブセンターから離れている地域に住んでいる妊婦さんたちが妊婦健診を受けられる機会でもあります。そこで出会った1人の妊婦さんの話がとても衝撃的だったので紹介します。
彼女は27歳で2人目の子どもを身ごもっています。
農家で働いており、この予防接種の日も農作業中に畑からコミュニティーのメンバーが連れてきました。
小学校を中退し、17歳の時に結婚し、18歳で妊娠しました。妊婦健診は一回も受けず、自宅で伝統的産婆の元、出産を試みましたが、陣痛が始まってからもなかなか生まれないため、病院に搬送され、出産しました。産後は会陰切開※の痛みのため、歩けなかったそうです。その後、3ヶ月後にその赤ちゃんは自宅で亡くなりました。病院に連れて行く時間もなく、息をひきとったそうです。
前回の出産の時になぜ1回も妊婦健診を受けていなかったかを尋ねたところ、助産師という存在自体を知らなかった。今回は、妊娠したら助産師に診てもらったほうがいいと、近所の人から聞いたため、助産師の元で一回目の妊婦健診をすでに受けたとのことでした。
助産師が村に訪問する際には村長から直接妊婦さんへ連絡が入ったり、村中に一斉放送をかけたりし、村の妊婦さんが助産師からのケアを漏れなく受けられるようにしています。
しかし、今回出会った妊婦さんは、前回の妊娠の時には居住地を転々としていたため、村長にも、助産師にも把握されなかったようです。今回は妊婦健診を受けられているようですが、彼女は携帯電話をもっていないため、助産師が自分の携帯番号を書いた紙を渡していました。彼女から健診に来ない限りは、助産師は何もサポートできない状況です。
このような事例から、保健サービスを本当に必要としている人々は、こちら側から把握する手段がなく、サービスがいかに届きにくい状況であり、取り残されてしまう存在であることがよくわかりました。
出産直前まで働かなければいけないと言っていた彼女。今回の出産での無事を願わずにはいられません。※会陰切開とは:出産の時に、赤ちゃんの頭が出やすくするために膣口と肛門の間を切開する方法
(海外事業部 志田保子)


TOP