~女性が安心して出産できる環境作り~
2月下旬に北里大学の吉野先生を招聘し、ミャウッミェイ地域保健センター管轄で働く助産師・補助助産師と彼らを管理・監督しているタッコン郡保健局のスタッフを対象に、ブラジルのお産のビデオを見ながら「女性(妊産婦)中心のケア」について講義をして頂きました。ブラジルでは過去に妊婦の人間性を重視した母子保健プロジェクトがJICAによって実施されており、吉野先生は専門家として関わられていらっしゃいました。
PHJでは村の女性が安心して出産し、妊娠中から産後にかけて継続的な母子保健サービスを受けられるようにサブセンター(正式名はSub-Rural Health Center)という村にある一次医療施設の建築を支援しています。
先月の活動レポートでも報告させて頂いた通りで、サブセンターの建築当初には、物珍しさからか分娩件数が一時的に上昇しますが、その後の分娩件数の上昇には、そこに勤務する助産師の人柄、コミュニケーション能力、村人からの信頼度といった要素が関連し、分娩件数の継続的な上昇は簡単ではないというのが現状です。
そのため、産む女性の気持ちを考えながらケアを行うというケアの本質を学び、安心して出産ができる環境作りを目指すことを目的とし、今回の講義に至りました。
普段、他の国の出産を見たことがないミャンマーの医療スタッフにとって、ブラジルのお産のビデオは、とても興味深いようで、皆じっくりと見入っていました。
ビデオ鑑賞後に感想を聞くと「私たちもブラジルのようなケアをしたい。ミャンマーでは搬送システムの問題が大きいので、ブラジルのように出産までの間待機する施設があれば、緊急事態が起こったときに救急車で病院にすぐ搬送できるのでとても良いと思った。
一方でブラジルでも助産師が女性が安全で安楽に過ごせるように産婦にマッサージをするなどのケアを提供しており、ミャンマーと同様の配慮をしていることがわかった。」とのことでした。
ブラジルのお産のビデオを見ることで、自分たちが普段しているケアについても客観的に考えることができ、良い機会になったようでした。
ミャンマーの村のお母さんが、安心して安全に子どもが産める環境を整えられるように、
今後もPHJは支援していきます。
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支援団体様によるカンボジア事業視察
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何もないサブセンターが、安心して産める場所になるまで。
PHJの活動地はミャンマーの首都ネピドーから車で約1時間半のミャウッミェイ地域保健センター管轄区に位置し、その中の全27村、人口約4万人に対して、村の末端にある一次医療施設(サブセンター)は合計6施設です。この一次医療施設は一般診療の他に分娩の役割も担っていますが、分娩室がない施設がほとんどで、中には助産師の家で診療を行っている場合もあります。
PHJの活動地の一次医療施設の一つであるニャオトンアイサブセンターは2016年6月に政府の予算で建築されましたが、患者用ベッドも分娩台も机も椅子など何もない状態でした。
政府から患者用ベッドなどが支給されるかわからない状態の中、サブセンターでの診療ができない日々が続きました。その間、助産師は自宅で診療を行っていましたが、分娩室はないため、この地域での分娩は、離れた地域の病院に行くか、自宅分娩をしており、村長や村人もこのサブセンターが稼働する日を心待ちにしていました。
そこでPHJでは、郡保健局や村長と話し合い、サブセンターが1日でも早く機能するように家具や必要な医療器具を揃え、2月上旬には助産師が移り住み、サブセンターでの診療を始めました。(注:医薬品は全て政府からの支給でPHJでは支援していません)
稼働してしばらくたった2月19日。朝9時ごろに、初めての赤ちゃんが誕生しました。出産した女性は、サブセンターから近隣の村から来た初産婦さんで、3㎏の元気な男の子を出産しました。
そして、この日を境に2月26日現在までに4件の新しい命が誕生しています。
今後は、建物の支援だけではなく、助産師の技術トレーニングや、住民への母子保健教育など、サブセンターが今後もこの地域の住民やお母さんと子供の健康増進に寄与できるようにPHJではサポートしていきます。
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助産師連携会議の進捗
12月末の2日間に保健行政区にて12保健センターの助産師を集めて助産師連携会議を開催しました。助産師21名がこの会議に参加しました。
会議ではまず、保健行政区の母子保健担当者より、助産師モニタリング時の問題点のフィードバックが行われ、健診混雑時の手洗いの徹底ができていないことがトピックとして取り上げられました。
各保健センターからの問題事例の報告とケーススタディでは、早産、妊娠高血圧症、胎盤排出遅延などの搬送事例や、伝統的産婆が出産介助した後で問題が起き助産師が呼ばれたケースなどが話合われ、州保健局からのトレーナーを交えて、今後どのように対応したらよいのかが話合われた。
午後には家族計画で使われる避妊具挿入についての講義と実技演習がトレーナーによって行われ、地方病院助産師も各自の演習のサポートをする様子が見られました。
本ページに掲載されている写真は、写真家の久保 年弘氏の撮影によるものです。
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村の妊婦さんと助産師をつなぐ 母子保健推進員の選出に向けて
PHJミャンマーのプロジェクトでは、農村地域の母子保健サービス改善を目的に、ネピド―から車で約1時間半離れているタッコン郡ミャウッミェイ地域保健センター管轄を対象としています。その地域は人口37,174人、27村、地域保健センターが1つとサブセンターが5つあります。
10月から新たに始まったプロジェクトが前のプロジェクトと異なる点は、よりコミュニティと助産師の結びつきを強くするために母子保健ボランティアではなく、「母子保健推進員」を育成するという点です。
前回のプロジェクトではタッコン郡下の5村に合計50名の母子保健ボランティアを育成し、地域の妊婦さんや産後の女性に母子保健教育を行うことでした。しかし、ボランティアだけで母子保健教育を行うというのは難しさがあったこと、また、現在タッコン郡の農村部では妊婦さんや産後の女性の数の把握が受動的(妊婦側からの連絡に頼る)であるため、村の妊婦さんの数を正確に把握できているか定かではないという問題点もあり、もっとコミュニティに密着してお母さんや子どもたちをサポートする存在を育成できないかと考え、現プロジェクトでは「母子保健推進員」を育成することにしました。
この母子保健推進員は国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)がミャンマー保健省と共に定めたボランティアの一形態で、村の妊婦や産後の女性の所在を確認し、助産師と連携をはかり、妊婦や産後の女性が適切な時期にケアを受けることができるような役割を担っています。
母子保健推進員は1人が約5人の妊婦さんを受け持つ形でコミュニティに配置されるため、コミュニティにいる妊婦や産後の女性が漏れなく母子保健サービスを受けられるように助産師との橋渡し役となります。推進員の選出には村長はじめ、村の人々の協力が不可欠である為、PHJでは11月下旬から12月にかけて村々を巡回し、村長や村人にプロジェクトの説明や母子保健推進員の役割と選出についての説明を行いました。
村々をまわり、村の人から実際に話を聞くと、移住者が多く、妊婦さんを把握しにくい地域や、若い人が出稼ぎに多く出て行っている為、母子保健推進員の選出も難しい地域もあります。PHJミャンマーでは、村人の協力の元、母子保健推進員を選抜し、村のお母さんと子どもの健康のために貢献できる人材を育てていきたいと思います。
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母子保健ボランティアによる家庭訪問時のスキルチェック
母子保健ボランティアは妊産婦への家庭訪問で保健知識強化を図り、保健センターの利用を促すという、事業の中でも大切な役割を担います。
この家庭訪問の際、母子保健ボランティアが妊産婦さんに何をどのように伝えるかが重要なのは言うまでもありません。
そこで2つの保健センターの管轄エリアの母子保健ボランティアの家庭訪問モニタリングを始めました。
このモニタリングでは各母子保健ボランティアに妊婦あるいは産後の女性の家庭訪問を行ってもらい、そこで実際の保健教育と情報収集の様子をチェックします。
モニタリングの際にはレポート等の記録についても確認を行っています。
母子保健ボランティアのスキルについては経験の差などもあり、チェックの結果はややばらつきがある、活動へのモチベーションにかなりの差がある、などの状況がこのモニタリングから見えてきました。
母子保健ボランティアの担い手である女性たちは、自身の農作業や短期出稼ぎなどの合間を縫って、このような地域を支える活動に関わっているという状況を踏まえて、これらの課題に向き合う必要があるようです。
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新プロジェクトの会議「安全な分娩環境とは」
ミャンマーでは11月上旬に新しいプロジェクト活動地のミャウッミェイ地域保健センターで、主に助産師などの医療スタッフ10名と安全な分娩環境支援を行うための会議を開催しました。
「安全な分娩環境とは?」「施設分娩(サブセンター)・自宅分娩のメリットデメリット」を話し合ってもらいました。 ※サブセンターとは村にある一次医療施設で人口3千~1万人をカバーしています。サブセンターには助産師と公衆衛生スーパーバイザーの2名が配属されています。
ミャンマー政府は安全な分娩のため施設分娩を推奨していますが、村にはお産をできる十分な施設もなく、自宅分娩が主流です。(下記写真が自宅分娩の様子)
PHJの活動地でも全分娩のうち約半数が自宅分娩で、その9割が助産師介助による分娩です。
昔から根付いている伝統的な自宅分娩を施設分娩に移行するのは容易なことではありません。会議の話し合いの結果、安全な分娩環境とは「分娩過程において母児が困難を伴わないこと」「無菌であり清潔な環境」という意見でした。
また、施設分娩は、助産師が分娩経過を長く観察でき、産後も保健指導ができる一方、たくさんの家族が付き添えない、交通費がかかる、妊婦にとって分娩室の環境は慣れないなどが挙げられました。
自宅分娩では施設まで行かなくてもよい、家族が周りにいるので安心して過ごせる面がある一方、医療機器や薬剤が不十分なこと、助産師が分娩の全過程に付き添えないという意見があがりました。
今回は助産師側からの意見でしたが、妊婦さんたちはどう考えているのかを今後聞き取り、プロジェクトの活動に反映させていく予定です。
(下記写真は自宅と施設の出産のメリット・デメリットを表にして記載した様子)
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